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私が「ちいさな家」に目覚めた日
「小さな家って、なんだか落ち着くよね」
そんなふうに、ぼんやりと惹かれていた時期がありました。
でも、「惹かれる」と「目覚める」のあいだには、静かだけれど確かな、何かの衝撃があるのだと思います。
私にとって、それは、ある1枚の図面との出会いでした。
増沢洵(ますざわまこと)という若き建築家が、1952年に建てた「最小限住居」。
東京・渋谷の住宅街に建つ、その家の図面を、私はふとしたきっかけで目にしました。
図面を見ただけなのに、なぜか、胸がいっぱいになって、ワクワクが止まらなくなったんです。
わずか15坪の空間。
だけど、そこにはちゃんと「家族が暮らす場所」がありました。
中心には吹き抜けがあって、階段も、書斎スペースも、寝室も、小さな台所もある。
廊下も玄関もなくて、どこにいても家族の気配がつながっている。
ことばでなぞる、増沢邸の間取り
外観は、切妻屋根の載ったごくシンプルな長方形。
内部は、正方形に近い平面。
中央が、吹き抜けのある居間。
その周囲に、水まわりや階段、食堂、寝室、小さな書斎などが配置されています。
玄関らしい玄関はありません。
ドアを開けると、いきなり吹き抜けと階段が現れます。
でも不思議と、そこに無理矢理感はなく、むしろ風通しの良さと開放感を感じます。
壁や柱は極限までそぎ落とされて、建築の骨組みがリズムよく現れています。
天井まで伸びる本棚、わずかな床の段差を活かした収納、自然光を取り込む窓の配置。
全体が、「必要最小限」と「工夫の最大限」でできているんです。
図面を見たい方は、「増沢邸 最小限住居 図面」などのキーワードでWeb検索してみてくださいね。
建築雑誌のバックナンバーや大学のアーカイブサイトなどで、詳細な平面図や立面図を見ることができるかもしれません。
小さな空間を、どうやってこんなに心地よく整えたのか、その工夫が図面からじんわり伝わってきます。
わたしが見つけた、ちいさな住まいの可能性
私は設計の勉強をしていたけれど、建築に関する職業には就きませんでした。
あっさり脱落して、別の仕事でずっと生きてきました。
でも、あの時、図面に見とれていた私は、ずっと私の中で息づいていたのです。
だから今、こうして、ちょっと離れた場所から、もう一度「住まい」のことを見つめ直しています。
「最小限住居」は、戦後の住宅事情の中で生まれました。
延べ床面積49㎡(15坪)という限られた空間に、生活の工夫をぎゅっと詰め込んだその家は、
今見ても、まったく古びていません。
吹き抜けによって空間が縦に開き、光が回り、風が抜けていく。
床の面積は小さいのに、空間は大きく感じる不思議。
そして何より、
「生活って、案外これくらいで足りるのかもしれない」
そう思わせてくれるような、静かな強さがあります。
あの図面に出会ってから、私の「ちいさな家」へのまなざしは、変わりました。
無理に削るんじゃなくて、本当に大事なものを残していくということ。
小さいからこそ、心地よく、美しく、暮らせること。
ここ10年ほどは、タイニーハウスにも惹かれるし、断捨離にも興味があるし、
ミニマルライフの本も気になって仕方がない。
…とまあ、相変わらず「興味は散らかって」いるのですが、
そのひとつひとつが、今の私をつくっているのだと思います。
これから少しずつ、そんな「小さな住まい」の魅力や、
私なりの妄想プラン(笑)も交えながら綴っていきたいと思っています。
また、よかったら、のぞいてみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
またふらりと、遊びにきていただけたらうれしいです。
2025.5.10