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とう子の小説紹介です。
彼岸花
宇江佐真理 著
光文社
現代も人生の一大事には、結婚や出産(子どもの誕生)がある。
江戸の世も同じ。恋愛、結婚、子育て、人の数ほどその形は違う。
本作は短編集。多くが読後、背中がすぅーと寒くなる感覚がした。
三姉妹の長女おえいは、婿養子をもらい落ちぶれた庄屋の跡を継いでいる。
次女おたかは、旗本屋敷の家臣に嫁ぎ、何に付けても武家の暮らしは百姓とは違うと得意そうにおたかに言う。そのくせ、夫が務めにしくじると大八車をひきいて実家に押しかけ、わずかな草鞋と引き換えに米や豆、青物などを当たり前の顔で持ち去っていく。
万事に吝嗇で厳しいおえい達の母も、おたかやその娘のこととなると途端に甘くなる。更には、おたかの娘の習い事の謝金まで、おえいの夫に都合をつけてくれるよう、婿は姑の言うことを聞くのが当たり前だなぞと言ってきた。
母の要求をはねのけたおえいだったが、妹の窮状を見かねて、「小作の家が空いているから娘と一緒に帰ってきたらどうか」と提案するが、おたかは「姉が家を出ていき、私たちが庄屋の家に帰れるなら考える」と答え、おえいの大切な思い出の品を奪って帰っていった。
二人の行く末はいかに。
分かり合えない姉妹の愛憎劇とでも表現したらよいのか。
幼い妹の為と結婚の自由を諦め家を継いだ長女と、望んで望まれて武家に嫁いだ次女。
互いを妬み、慈しむ。
目次
・つうさんの家
・おいらのツケ
・あんがと
・彼岸花
・野紺菊
・振り向かないで
2024.10.30
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