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とう子の小説紹介です。
江戸の娘
平岩弓枝 著
角川文庫
何度もテレビドラマ化もされているが、『御宿かわせみ』という小説をご存じだろうか。
私は、小学生の頃からこの小説のファンである。
本作、『江戸の娘』はその御宿かわせみの原点と言われる作品である。
【絵島の恋】
世にいう「絵島生島」の絵島の話であるが、視点が変わるとこういう見方もあるのかと驚いた。
江戸時代、男社会の中で大奥という特殊な職場で、己の職を全うしようとした女が恋をした。その恋は、裏で筋書きを書く者がおり陰謀にまみれていたが、女はそれに気づくことなく、流される。職責を果たしたまま死んでいく女を、嘲笑うのは誰なのか。
【日野富子】
絶世の美少女として名高い富子の人生において、愛と肉欲に、狭くは嫁姑問題が、広くは政治的策略が、常にまとわりついていた。
女の体を持ちながら女の心を殺された富子の、復讐に生きる姿がおぞましい。
美少女から魔性の女に転じた女の行きつく先はどこにあるのか。
【江戸の娘】
大店の鶴伊勢屋でお嬢さんとして育ってきたはずのお鶴だが、病弱な兄に代わり武術の稽古を受けた結果、気づいた時には時にお転婆を発揮してならず者相手に武勇伝を作りあげ、おきゃんな蔵前小町と呼ばれていた。
鶴伊勢屋に身を寄せるお鶴の叔母の元を訪ねてきた武家の客人を案内するよう言付かるお鶴。客人は叔母のかつての奉公先の若者で名を章二郎という。お鶴は章二郎に先の人助けの武勇伝を「生兵法は怪我の元」と言われ反感を覚える。何度か叔母を訪ねてくる章二郎を意識するまいとするが、惹かれている自分に気づく。
お鶴は章二郎に関する心落ち着かない話を聞き、章二郎の馴染みの遊女に会いに行こうとする。
初めての恋に生きるおきゃんな町娘の物語。
ほぼ全編、人の愛憎が濃く描かれている。最後の『江戸の娘』の清涼感で、どろどろと喉に引っかかっていたものが流れていったような感じがしました。
目次
・狂歌師
・絵島の恋
・日野富子
・鬼盗夜ばなし
・出島阿蘭陀屋敷
・奏者斬り
・江戸の娘
