金網の向こう ぼくは米軍基地にある小学校に一年間通った

ぐるんぱの絵本紹介 金網の向こう ぼくは米軍基地にある小学校に一年間通った 児童書

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ぐるんぱの絵本紹介です。(今回の投稿者は『とう子』です。)

金網の向こう ぼくは米軍基地にある小学校に一年間通った

向山貴彦 文
たかしまてつを 絵
角川春樹事務所

作家である向山氏の体験を記した物語。
向山氏のよく言っていた言葉「優しさは、強さを足して初めて本物になる。」の原点は、ここにあるのかもしれない。

四十数年前アメリカで、日本人の両親のもとに生まれた『テディ』
小学1年生の時、日本に帰国し生活が日本語一色になりかけた頃、テディの両親はテディを米軍基地にある小学校へ転校させた。
全校生徒数百人のうち日本人はテディ一人という、日本の中にあるがアメリカ式の学校に、小学4年生の1年間通った記録。
軍人の子どもだらけで子どもにも親の階級に準じた序列がある世界。
中学生はポケットナイフを玩具がわりにして、小学生を恐喝して回る。
校内は攻撃的な雰囲気が充満し、なんでも競争させられケンカは始終そこらあたりで起きている。

初日は、国際色豊かな悪口を一日中浴びせられた。控えめに言って地獄。
なぜ、テディの両親はこんな選択をしたのか。
無理を言って転校させてもらったらしく、校長先生にペコペコしている母親に、ナイフで脅されたことを言えないテディ。
「ナメられたら終わり」と助け船を出してくれたジェフもテディのなけなしの金をくすねる。
そんな環境にも、少しずつ慣れて少しずつ立ち向かうテディ。
一年間が過ぎ、別れの日、テディは『もう二度と会うことはないだろう』の思いを抱き、クラスメイトと握手をして、金網のこちらの世界に戻ってきた。

決して交差しない道が、何かの間違いで束の間交わっただけのこと、という過酷な一年間が描かれている。

2924.9.29