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本の情報
タイトル:コンビニ人間
著:村田沙耶香
出版社:文春文庫

36歳の主人公。
大学1年生の5月1日、オープンしたばかりのコンビニでアルバイトを始めてから、気づけば18年が経っていた。
「コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない。」
幼い頃の記憶には、どこかズレた感覚がある。
公園で死んでいた小鳥を「せっかく死んでいるんだから」と焼いて食べようとしたり、
ケンカを止めるためにスコップで男子の頭を叩いたり、
ヒステリックに怒鳴る先生のスカートとパンツを突然下ろしたり。
それが「悪いこと」だと気づいたのは、周囲の反応を見てからだった。
「普通」が分からない。
けれど、完璧な「コンビニ人間」にはなれる。
毎日同じ時間に出勤し、決められた手順で働き、
コンビニで買った食べ物を食べ、飲み物を飲み、また明日もコンビニで働く。
「普通になりなさい」と言われる社会。
その普通に、自分の輪郭を合わせられない人間がいたとして、
それは本当に異常なのだろうか。
読後、すっきりするわけではない。
晴れやかな気持ちにもならない。
何なら少し、いや〜な汗をかいたような感覚すら残る。
けれど、一気に読み進めずにはいられなかった。
先日、某コンビニでエナジードリンク1本を買ったとき、
レジに並ぶ人は他におらず、すぐに会計が終わった。
それでも店員は「大変お待たせいたしました」と言いながら、商品を丁寧に差し出してきた。
私は心の中で「待ったか?いや、待ってないよな?」と思いつつ、
軽く会釈をして店を後にした。
そのときふと、
「完璧なコンビニ人間」は、今目の前にいたな、と思ったのです。
2025.5.23